日本臨床外科学会雑誌
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症例
ソマトスタチンアナログが奏効した術後乳糜腹水の3例
星川 竜彦和泉 秀樹福光 寛飛田 浩輔向井 正哉幕内 博康
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2011 年 72 巻 11 号 p. 2951-2955

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抄録

術後の乳糜腹水に対してソマトスタチンアナログ(オクトレオチド)を使用し有効であった3例について報告する.症例1は61歳女性で悪性リンパ腫の疑いで腹腔鏡下傍大動脈リンパ節生検を施行した.術後第6病日よりドレーン排液が乳白色となり,排液の中性脂肪(以下TG)値は3,295mg/dlであった.乳糜漏の診断で,オクトレオチド300μg/日を開始したところ,2日後には排液量も減少し,TG値は218mg/dlまで改善した.症例2は83歳女性で食道胃接合部の穿孔による腹膜炎で緊急手術を行った.術後第6病日から乳糜腹水が出現し,TG値は399mg/dlであった.オクトレオチド200μ/日を開始したところ,TG値は72mg/dlまで改善した.症例3は53歳男性で膵頭部癌に対して全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を行った.術後第6病日に乳糜漏を認め,排液のTG値は399mg/dlでオクトレオチド開始後には72mg/dlに改善した.術後乳糜漏に対する早期のオクトレオチド使用は有効であると考えられた.

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