日本臨床外科学会雑誌
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症例
Ductal adenoma内に発生した非浸潤性乳管癌の1例
有村 俊寛高崎 隆志
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2011 年 72 巻 12 号 p. 3018-3025

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抄録

症例は55歳,女性.左乳房の緊満感と左乳頭からの分泌物を主訴に受診した.視触診にて左乳房「D」領域を中心に約6.0×5.5cmの腫瘤と単孔性血性漿液性分泌を認めた.マンモグラフィで約6.0×5.5cmの分葉状,一部境界不明瞭のやや高濃度の腫瘤陰影を認めた.超音波検査は分葉状の嚢胞性腫瘤像を示した.針生検にて,ductal adenoma疑いと診断し腫瘤を含めた乳管腺葉区域切除術を施行した.手術標本では,ductal adenomaの中に部分的に単調な細胞よりなる異型腺管の密な増殖が認められ,筋上皮細胞との二相性が消失していた.浸潤像はなく非浸潤性乳管癌と診断した.追加切除および左腋窩リンパ節郭清は行わず,左乳房への放射線照射50Gyを施行した.ductal adenomaは良性疾患であり,適切な切除で再発はしない.一般にcarcinomaへの素因には成らないと言われ,本症例は極めて稀で貴重な1例と思われた.

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