日本臨床外科学会雑誌
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症例
正中弓状靱帯圧迫による腹腔動脈起始部狭窄を伴った膵頭部癌の1例
斉藤 良太三澤 健之伊藤 隆介坂本 太郎柴 浩明矢永 勝彦
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2011 年 72 巻 12 号 p. 3149-3153

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抄録

腹腔動脈起始部狭窄を合併した膵頭部癌の1例を経験した.症例は54歳男性.PSA高値のため泌尿器科を受診した.腹部超音波検査で主膵管拡張,膵頭部腫瘤を認め当科紹介となった.上腸間膜造影検査で下膵十二指腸動脈より拡張した膵アーケードを介して肝動脈が造影され,腹腔動脈の根部に狭窄を認めた.造影CTでも腹腔動脈根部に狭窄を認め,正中弓状靱帯圧迫による腹腔動脈起始部狭窄を伴う膵頭部癌と診断した.手術は膵頭十二指腸切除術および正中弓状靱帯切離を施行した.術中超音波ドプラー検査での肝動脈血流量では,正中弓状靱帯切離前は17.5cm/s,切離後は28.8cm/sと改善を認め胃十二指腸動脈は通常通りに処理可能であった.腹腔動脈起始部狭窄を伴う症例の膵頭部切除術では,術中超音波ドップラー検査による肝動脈血流のモニタリングが有用であると考えられた.

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