日本臨床外科学会雑誌
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症例
卵殻で穿孔をきたした放射線性小腸炎の1例
北村 祥貴前田 一也宮永 太門道傳 研司服部 昌和橋爪 泰夫
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キーワード: 放射線性小腸炎, 卵殻, 穿孔
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2011 年 72 巻 2 号 p. 375-378

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抄録

患者は60歳代,女性.7年前に子宮頸癌に対し放射線治療の既往があり,数年前から下痢があった.2010年7月上旬,5時間前からの下腹部痛を主訴に救急外来を受診.腹部CT検査で遊離ガスと腹水を認めた.小腸内に1.5cm大のhigh densityな構造物を認めたが,穿孔との関連は不明であった.消化管穿孔,汎発性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.下腹部正中切開で開腹すると混濁した腹水が約200mlあり,回腸は放射線治療の影響で白色調を呈し硬化していた.回盲弁から約15cmの回腸に穿孔を認め,同部位の腸管内に1.5cm大の薄く硬い物体を触知した.穿孔部を含めて回盲部切除を施行し,肉眼的に健常な部位で機能的端々吻合した.摘出標本内の穿孔部には1.5cm大の卵殻があり,病理組織検査とあわせて放射線性小腸炎に伴う卵殻による小腸穿孔と考えられた.放射線治療の晩期合併症として小腸穿孔は注意すべきものであるが卵殻によるものの報告はなく,文献的考察を加えて報告する.

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© 2011 日本臨床外科学会
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