2011 年 72 巻 2 号 p. 414-417
経肛門的にS状結腸脱出を生じた直腸穿孔の1例を経験した.症例は87歳の女性で,排便時に腹痛と肛門部出血があったが自宅で様子観察し,翌日訪問看護師が訪れた際に肛門からの結腸脱に気付き救急搬送されてきた.来院時,肛門よりS状結腸が約30cmにわたって脱出,脱出結腸は絞扼され暗赤色調であった.直腸穿孔に伴うS状結腸脱を認めたため緊急手術を施行した.全身麻酔下に開腹すると汚染腹水は認めず,結腸は直腸S状部の前壁を貫いて直腸内に入り込み,経肛門的に体外へ脱出していた.直腸S状結腸部前壁は長軸方向に3.5cmにわたり破裂,周囲の直腸壁には憩室や腫瘍などの異常は認めなかった.断裂部を含め直腸S状部を切除してHartmann手術を施行した.術後の経過は良好で軽快退院された.