2011 年 72 巻 2 号 p. 444-447
症例は76歳,男性.2008年12月に便秘および下腹部痛で受診し下部消化管内視鏡検査にて直腸に全周性腫瘍(生検にて中分化型管状腺癌)を認めた.精査にて多発肝転移・肺転移を伴う進行直腸癌と診断されたが,腸閉塞寸前の状態であったため原発巣に対して腹腔鏡下直腸前方切除術,D2郭清を施行した.術後経過は良好で術後13日目に退院となった.転移巣に対して化学療法を開始予定であったが,術後45日目に腰痛および股関節痛にて緊急入院し急速なDisseminated intravascular coagulation syndrome(以下DIC)の進行を認めた.播種性骨髄癌症と診断しDICに対する治療を継続するも発症後26日目に死亡した.
直腸癌の播種性骨髄癌症は稀な疾患であり,DICに対する治療が無効である場合は極めて予後不良である.ただ化学療法を行うことで生存を得た症例報告もあり,症例の蓄積による治療法の検討が必要と考えられる.