日本臨床外科学会雑誌
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症例
心タンポナーデで発症した横隔膜部腹膜原発中皮腫の1例
藤本 崇聡高見 裕子和田 幸之才津 秀樹桃崎 征也
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2011 年 72 巻 3 号 p. 640-646

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抄録

症例は69歳,女性.2008年7月心窩部および前胸部圧迫感を主訴に近医を受診.腹部超音波検査,CTにて肝左葉に巨大肝腫瘤を認め,また胸部レントゲンにて心陰影の拡大あり,心タンポナーデをきたしていた.緊急的に心嚢穿刺し血性心嚢液800ccを吸引(細胞診classI).2008年8月当科紹介.各種画像診断にて肝左葉に10cm超の不整な腫瘤,また心嚢内にも3cm超の腫瘤が存在し,大量の貯留液を認めた.血流豊富な肝血管肉腫を疑い,feederである肝動脈外側区域枝および左右内胸動脈,左下横隔膜動脈の化学塞栓術施行.その約3週間後に心嚢の一部,左横隔膜約60%合併切除を伴う肝外側区域切除を施行した.
病理組織診断は悪性中皮腫.肝と心膜に直接浸潤があるものの,病変の主座より横隔膜原発と考えた.術後pemetrexedとcisplatin(CDDP)による化学療法を6クール施行し,16カ月無再発生存中である.

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