日本臨床外科学会雑誌
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症例
急性虫垂炎から壊死性筋膜炎を発症した1例
林 泰成渋谷 俊介鈴木 雄郷右近 祐司
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2011 年 72 巻 3 号 p. 716-721

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抄録

症例は88歳,女性.前医入院中,下腹部痛が増悪し,下腹部発赤,握雪感を伴う膨隆を認めたため,精査加療目的に当院紹介となった.血液検査で著明な炎症反応と,腹部CT検査で下腹部皮下組織内に多量のガス像を認めたため,直ちに切開排膿を行い,抗生剤投与を開始した.翌日,症状が改善しないため,壊死性筋膜炎を疑い,脊椎麻酔下にデブリドマンを行った.下腹部の脂肪組織,腹直筋前鞘に広汎な壊死を認め,臨床的に壊死性筋膜炎と診断した.この際,右下腹部腹壁に瘻孔の開口部を疑わせる陥凹を認めたが,腹腔内との交通は明らかでなかった.後日,瘻孔造影を行い,腸管との交通が明らかになったところで,開腹手術を行った.虫垂先端が右下腹部腹壁と癒着し,腹壁と瘻孔を形成していたため,虫垂切除と瘻孔の縫合閉鎖を行った.急性虫垂炎から壊死性筋膜炎を発症した報告例は本邦で6例と少なく,貴重な症例と考え報告する.

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