日本臨床外科学会雑誌
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症例
肺癌全身化学療法中に難治性直腸膀胱瘻を形成したアメーバ赤痢の1例
玉木 一路間中 大馬場 慎司
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キーワード: アメーバ赤痢, 化学療法
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2011 年 72 巻 3 号 p. 727-731

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抄録

アメーバ赤痢は,アメーバ原虫の経口感染により下痢,腹痛,血便などを生じる疾患で,消化管穿孔を生じて致死的となることがある.保菌者の免疫機能低下が発症,重症化と関連することが知られている.今回われわれは肺癌に対する全身化学療法の開始を契機として直腸の巨大潰瘍で発症したアメーバ赤痢を経験した.潰瘍の重症化により直腸膀胱瘻を形成し,また多発肝膿瘍の合併により高度の炎症反応を認めた.アメーバ赤痢に対して抗アメーバ療法を行った後,直腸膀胱瘻に対する二期的手術を施行した.これにより,患者のQOLを保ちながら肺癌に対する化学療法を再開することができた.化学療法を誘引とするアメーバ赤痢では,迅速な診断と抗アメーバ療法の開始がその後の原疾患の治療に大きく影響する.全身化学療法中の患者では本症の発生も念頭に置く必要がある.

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© 2011 日本臨床外科学会
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