日本臨床外科学会雑誌
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症例
外膀胱上窩ヘルニアと内膀胱上窩ヘルニアの両方の特徴を呈した1例
長谷 諭片山 晃子田原 浩布袋 裕士前田 佳之三好 信和
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2011 年 72 巻 3 号 p. 778-781

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抄録

症例は59歳,男性.約10年前から左鼠径部に膨隆を自覚していた.平成21年11月,自分で還納した後に腹痛と嘔吐が出現し,近医にて腸閉塞を指摘され当院紹介となった.CTにて膀胱前面に拡張した小腸ループを認め,膀胱壁を外方から内方へ圧排していた.内ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断して緊急手術を施行した.下腹部正中切開にて開腹すると,小腸が膀胱頂部の左側で内側臍ひだの内側の膀胱上窩に嵌頓しており,壊死小腸を切除した.ヘルニア嚢を確認すると左膀胱上窩から皮下を経由して左鼠径部に到った.感染の危険性を考慮して,手術はヘルニア門の縫合閉鎖のみとした.術後の経過は良好だった.外膀胱上窩ヘルニアも内膀胱上窩ヘルニアもまれな疾患であるが,自験例は左鼠径部に膨隆を認めていた外膀胱上窩ヘルニアの所見と,膀胱前面にて内ヘルニアをきたした内膀胱上窩ヘルニアの所見を両方認めた症例だった.

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