日本臨床外科学会雑誌
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症例
上腸間膜静脈腫瘍栓による小腸壊死にて発症した膵癌の1例
乾野 幸子青木 貴徳谷 誓良大黒 聖二下國 達志浜田 弘巳
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2011 年 72 巻 4 号 p. 1022-1027

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抄録

膵癌の初発症状は腹痛,黄疸,背部痛の順に多く,腫瘍栓に伴う症状で発症することは極めて稀である.今回,上腸間膜静脈腫瘍栓により発症した膵癌を経験した.症例は77歳,男性.腹痛,下血を主訴に救急外来受診.強い心窩部痛と心電図上心房細動を認めたため上腸間膜動脈血栓症を疑い,動脈相中心の腹部造影computed tomography(以下CT)を施行.CTでは原因の特定に至らなかったが,症状が強いため試験開腹術を施行した.開腹所見では血性腹水,小腸と腸間膜の黒赤色変化,腸間膜静脈の血栓を認め,小腸切除,血栓除去,人工肛門造設を行った.術中採取した静脈壁の内部に腫瘍所見ありとの病理診断を得た.原発巣の検索を行い,膵頭体移行部に腫瘍を認め膵管細胞診でadenocarcinomaとの結果より,膵癌に伴う上腸間膜静脈腫瘍栓・血栓と診断した.自験例のように上腸間膜静脈腫瘍栓・血栓を初発症状とした膵癌の報告例は検索した限りではなく,極めて稀な症例と思われ報告する.

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© 2011 日本臨床外科学会
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