2011 年 72 巻 4 号 p. 869-875
症例は53歳,男性.左側乳房腫瘤を自覚し当院外科受診.左乳房のCD領域に約3.0cm大で弾性硬の境界不明瞭な腫瘍を触知した.マンモグラフィでは,左CD領域に円形で境界不明瞭な腫瘍陰影を認めた.乳腺超音波検査では,左CD領域に径30.6×12mmのlow echoic lesionを認めた.core needle biopsyを施行したところ,顕著な壊死が認められ,一部にinvasive ductal carcinomaが強く疑われた.そのため,さらに免疫染色検査を施行したところ,異型腺管に二相性は見られず,invasive ductal carcinomaに相当する所見であった.男性乳癌の診断で左胸筋温存乳房切除術および左腋窩郭清を施行した.病理結果は,腫瘍の中心部に広範な壊死を認め,辺縁部にviableなinvasive ductal carcinomaを認めた.核グレードは1で,リンパ節転移は認めず,ER:陽性,PGR:陽性,HER2:0であった.術後経過は良好で第10病日に退院となった.退院後は当科外来に通院しているが,現在再発徴候は認めていない.