2011 年 72 巻 4 号 p. 926-930
症例は66歳,男性.2年前に左腎癌の診断で左腎摘出術を施行されている.下血とふらつきを主訴に受診し,消化管出血による貧血の診断で入院となった.CTでは上行結腸に内腔に突出し,造影効果を伴う腫瘤性病変を認めた.下部消化管内視鏡検査では上行結腸に約半周性の柔らかい隆起性病変を認めた.生検ではnecrotic tissueのみで確定診断はえられなかった.しかし,輸血を必要とする下血が続くため,腹腔鏡補助下結腸右半切除術を施行した.術後の病理組織学的診断により腎癌の結腸転移と診断された.結腸切除術の約4カ月後に多発肺転移,右副腎,膵尾部への転移が明らかとなり,インターフェロンαおよび,スニチニブなどの分子生物学的治療により約4年6カ月を経過した現在も生存中である.腎癌の結腸転移はまれであり,若干の文献的考察を加え報告する.