日本臨床外科学会雑誌
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症例
肛門温存切除術後に難治性瘻孔を合併し大殿筋膜皮弁充填術により治癒した直腸癌の1例
若月 一雄吉岡 茂片岡 雅章外岡 亨太枝 良夫
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2011 年 72 巻 4 号 p. 955-959

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抄録

症例は42歳,男性.歯状線より1.5cmの下部直腸に30mm大の2型腫瘍を認め,生検にて高分化腺癌であった.内肛門括約筋切除術(以下ISR),3群リンパ節郭清,transverse coloplasty,横行結腸人工肛門造設術を施行.病理組織検査では,高分化腺癌,固有筋層までの浸潤でリンパ節転移を認めなかった.術後21日目に退院し,1カ月目に注腸造影を施行しtransverse coloplasty部より骨盤内に造影剤の漏出を認めた.保存的に経過をみるも術後11カ月でも瘻孔の治癒を認めず術後15カ月目に大殿筋膜皮弁充填術を施行.この手術後12カ月目に注腸造影にて瘻孔閉鎖を確認し,人工肛門閉鎖術を施行した.現在人工肛門閉鎖後4年4カ月経過し,再発を認めず,排便機能も良好である.これまでにISR後の骨盤内瘻孔に対して大殿筋膜皮弁充填術を施行し治癒した報告例はなかった.大殿筋膜皮弁充填術は有用な術式であると考えられた.

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© 2011 日本臨床外科学会
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