2011 年 72 巻 4 号 p. 998-1002
症例は65歳,女性.両下腿の腫脹と疼痛を主訴に近医を受診した.下腿腫脹,疼痛の原因は深部静脈血栓症であった.血液生化学検査にて胆道系酵素の上昇を認め,CTで肝左葉に9cm大の腫瘍を認め当科に紹介された.胸部造影CTで肺塞栓も認められ,入院後からヘパリンによる抗凝固療法を開始した.肝腫瘍は肝内胆管の拡張を伴う分葉状腫瘍で,肝内胆管癌と診断した.肝内および他臓器転移はなく,リンパ節郭清を含めた拡大肝左葉切除術を施行した.周術期は一時的下大静脈フィルター留置した.術後に血栓の増悪はなく経過は良好で,第18病日に退院した.静脈血栓塞栓症を合併した肝内胆管癌の切除例の報告は少ない.周術期管理法を含めて文献的考察を加えて報告する.