2011 年 72 巻 5 号 p. 1145-1150
症例は79歳,男性.6カ月前,総胆管結石による急性胆管炎にて,前医で内視鏡的総胆管結石摘出術に続き,内視鏡的逆行性胆道ドレナージ(ERBD)チューブ(7Fr-7cm,pigtail stent)が留置され経過観察中であった.今回,下腹部痛が出現し当院を受診.CT所見から,逸脱したERBDチューブによる小腸穿孔を疑い緊急手術を行った.開腹すると,回腸を中心に多発する憩室を認め,その一部がERBDチューブにより穿孔しており,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的に穿孔部に潰瘍を認めたことから,憩室炎あるいはERBDチューブの長期接触により憩室壁の潰瘍が形成され,今回,蠕動運動などによってERBDチューブが菲薄化した憩室壁を穿孔させたと考えた.Pigtail typeのERBDチューブによる多発小腸憩室症の穿孔は非常にまれであり,その管理も含め,教訓的な症例であると思われた.