日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹腔鏡下虫垂切除術後5年以上生存した早期虫垂癌の1例
衛藤 謙阿南 匡大熊 誠尚藤田 哲二柏木 秀幸斎藤 彰一池上 雅博矢永 勝彦
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2011 年 72 巻 5 号 p. 1171-1175

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抄録

症例は73歳,男性.大腸内視鏡検査で,虫垂開口部を中心とした粘膜下腫瘍様の隆起を認めた.生検組織検査を行ったところ,中等度異型を呈する腺腫性病変であった.悪性腫瘍を否定できないため,診断的治療のため2005年11月に腹腔鏡下虫垂切除術を行った.腫瘍は虫垂開口部から虫垂内腔に連続する,40×25mmの表面顆粒状の隆起性病変であった.術後病理組織診断は粘膜内に限局した高分化腺癌で,高度異型を呈する腺腫成分を伴っており,分類上colonic typeの虫垂癌だった.現在,術後5年2カ月が経過したが,再発および転移を認めていない.一般的に虫垂癌は予後が悪いと言われ,リンパ節郭清を含む回盲部切除術あるいは結腸右半切除術が推奨されている.しかし,colonic typeの虫垂癌に対しては,腫瘍細部の浸潤が粘膜内に留まれば,虫垂切除のみで十分に根治性を得られることが示唆された.

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