日本臨床外科学会雑誌
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症例
腹部鈍的外傷後遅発性小腸狭窄の1小児例
住田 亙渡辺 芳夫
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2011 年 72 巻 6 号 p. 1457-1460

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抄録

症例は10歳,男児.乗用車同乗中に交通事故に遭い,シートベルトで腹部を強く圧迫した.受傷12日後から,嘔吐が出現し,受傷40日後に当院を受診した.MRIシネグラフィーにて腸管の狭窄像とその部位での腸内容のto-and-froを認めたため,腸管の通過障害と診断して腹腔鏡下に手術を施行した.Treitz靱帯から約40cm肛門側の部位の空腸に狭窄と大網の癒着を認めた.全小腸を観察し,他の部位に異常を認めなかったので,この部位を通過障害の原因と考えて切除吻合した.術後経過は良好である.消化管損傷は受傷直後に緊急手術を要することが多いが,受傷後長期間経過してから腸閉塞の症状を呈することがまれにある.手術歴のない原因不明の腸閉塞での受診となる可能性があり,本症を念頭に置いた病歴聴取が重要である.

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