日本臨床外科学会雑誌
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症例
妊娠中に発症した虫垂粘液嚢腫軸捻転の1例
楊 知明岡村 隆仁東山 元臣中村 友哉加藤 達史中山 裕行
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キーワード: 妊娠, 虫垂粘液嚢腫, 軸捻転
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2011 年 72 巻 6 号 p. 1479-1483

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抄録

症例は37歳,妊娠38週で当院通院中の妊婦.3日前より続く右下腹部痛を主訴に当院を受診した.身体所見では右下腹部に反跳痛を認めた.血液検査では白血球13,000/μl,CRPは17.69mg/dl,CEAは0.76ng/ml,CA 19-9は37ng/mlであった.腹部超音波検査で虫垂と思われる部位に9×3×3cm大の嚢胞性病変を認めた.またカラードップラーでは病変への血流は確認できなかった.虫垂軸捻転と診断し,緊急手術と帝王切開を同時に施行した.開腹すると直径3cmに緊満した虫垂が根部を軸に反時計方向に720°捻転していた.腹腔内に悪性所見は認められず,児を娩出の後,虫垂切除術を施行した.病理組織検査では虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された.術後経過は良好で術後10日で退院となった.虫垂軸捻転はまれな疾患で,さらにその原因が粘液嚢腫であるものは自験例を含めて19例しか報告されていない.加えて妊娠中に発症した例は本邦初である.今回,若干の文献的考察を加え報告する.

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© 2011 日本臨床外科学会
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