日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
サルベージ生体肝移植を含めた集学的治療により初発後24年間長期生存している肝細胞癌の1例
原 貴信江口 晋高槻 光寿曽山 明彦日高 匡章兼松 隆之
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 72 巻 6 号 p. 1516-1520

詳細
抄録

症例は54歳,男性.1976年(23歳時)にB型慢性肝炎と診断された.1985年にS8の肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCCと略記)に対し,肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization;TAEと略記)後に肝亜区域切除術を施行.以後24年間に他部位再発を繰り返し,肝切除2回,TAE2回,経皮的エタノール注入療法(percutaneous ethanol injection therapy;PEITと略記)4回,経皮的ラジオ波凝固(radiofrequency ablation;RFAと略記)3回を施行された.2008年,S4に17mm,S8に27mmのHCC再発(7回目)を指摘.動脈の狭小化,度重なる開腹・RFAに伴う肝周囲への腸管の癒着から,局所療法による腫瘍制御は困難となった.肝移植を希望され当科受診.再発を繰り返す治療抵抗性のHCCであるがミラノ基準内であり,肝移植による根治が期待できると判断.27歳の長女をドナーとして右葉グラフトによる生体肝移植を施行した.組織学的には肝硬変であった.現在,移植後29カ月で無再発生存中である.本症例では各時代に可能な限りの腫瘍制御,肝機能温存を行ったことが,長期にわたる治療に結びついたと考えられた.

著者関連情報
© 2011 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top