2011 年 72 巻 6 号 p. 1536-1540
症例は47歳,男性.約1カ月前からの腹痛,嘔吐を主訴に近医受診.上部消化管内視鏡検査で十二指腸水平脚の狭窄を指摘.腹部CT・MRIにて後腹膜血腫による十二指腸通過障害と診断され,精査目的に当院受診となった.腹部血管造影検査では,前下膵十二指腸動脈領域に多発嚢状動脈瘤を認め,segmental arterial mediolysis(以下SAM)が疑われた.後腹膜血腫は,SAMに伴う動脈瘤が原因と考え,同動脈瘤に動脈塞栓術(以下TAE)を行った.検査結果により,血管炎は否定,SAMによる動脈瘤の破裂と診断された.今回われわれは後腹膜血腫による十二指腸狭窄という比較的稀な発症様式を呈し,TAEで治療可能なSAMの1例を経験したので,文献的考察を交えて報告する.