日本臨床外科学会雑誌
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症例
腫瘤自覚10年後に切除した乳腺invasive cribriform carcinomaの1例
相山 健藤田 裕美細田 充主田口 和典高橋 弘昌藤堂 省
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2011 年 72 巻 7 号 p. 1715-1720

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抄録

Invasive cribriform carcinoma(以下ICC)は1983年にPageらが最初に報告した乳癌の組織型であり,当初はclassicalとmixedタイプの2種類に分類されたが,現在WHO分類ではpureタイプが加わり3種類に分類されている.その発生頻度は通常の乳癌の0.3から4.9%と報告されている比較的稀な乳癌組織型である.今回われわれは腫瘤を自覚してから10年後に切除したICCを経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は71歳女性で,2000年頃より左乳房の腫瘤を自覚していたが,放置していた.2010年1月頃より腫瘤の増大を自覚し,同年4月当科初診となった.穿刺吸引細胞診にて悪性疑いであったが,本人が更なる検査を希望しなかったため,T2N0M0 StageIIA乳癌として胸筋温存乳房切除術及び腋窩リンパ節郭清を施行した.病理組織診の結果はICC(pure type),腫瘍径30mm,WHO grade 1,ly(-),v(-),ER(+),PgR(+),HER2(1+),n0,pT2pN0M0,pStageIIAであった.海外で報告されているICCの治療成績は良好で,5年生存率100%,10年生存率91%と報告されている.ICCのER陽性率は100%,PgR陽性率は69%,HER2発現率は0%と報告されており,これらが予後良好であることに寄与していると考えられる.

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© 2011 日本臨床外科学会
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