2011 年 72 巻 7 号 p. 1827-1832
症例は70歳,男性.右季肋部痛のため近医受診,腹部CTで肝腫瘍および肝内血腫を指摘され緊急入院となった.保存的加療で安定し退院後,精査加療目的で当院へ紹介受診された.血液検査所見で肝炎マーカー陰性,腫瘍マーカーはAFP:3,959ng/ml,PIVKA2:61mAU/mlと上昇,腹部CTで肝前区域~S4にかけ早期濃染を呈し内部に血腫と思われる低吸収域を伴う腫瘍と,その周囲に被膜下血腫と思われる低吸収域を広範囲に認めた.肝細胞癌切迫破裂と診断し肝切除術を行った.肉眼所見は被膜を有する5cm大の腫瘍で,その周囲に多量の被膜下血腫を伴い,腫瘍内にも血腫が認められた.病理所見は低分化型の肝細胞癌であった.術後経過良好で20日目に軽快退院となった.被膜下血腫に留まった肝細胞癌破裂の本邦報告例は比較的稀であり,若干の文献的考察を含め報告する.