2011 年 72 巻 8 号 p. 1933-1936
比較的まれな乳癌による傍腫瘍性小脳変性症を経験したので報告する.症例は66歳の女性,歩行時の浮動感が急に出現し,近医受診した.頭部MRIや頸部超音波検査では異常所見がなく,経過観察となった.2週間後には歩行困難となり,構音障害や嘔吐が出現し,経口摂取不良となったために当院へ紹介された.内分泌代謝疾患・感染症・中毒などの所見はなく,頭蓋内腫瘍も否定された.胸腹部造影CTにて右腋窩リンパ節腫大を認め,精査したところ右乳房C領域に2.6cmの乳癌を認めた.歩行困難などの症状は,傍腫瘍性小脳変性症によるものと考え,右胸筋温存乳房切除術および右腋窩郭清を行った.術後4日目に血清抗Yo抗体が陽性であることが判明した.