2011 年 72 巻 8 号 p. 2097-2101
直腸肛門部悪性黒色腫はまれで,予後不良な疾患である.今回われわれは腹会陰式直腸切断術およびセンチネルリンパ節生検術を施行し,術後に免疫化学療法を施行した早期直腸肛門部悪性黒色腫の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は67歳の女性で憩室炎後のフォローアップで施行された下部消化管内視鏡検査で肛門部の黒色病変を指摘された.肉眼所見,ダーマスコピー検査,下部消化管内視鏡検査にて悪性黒色腫を疑った.病変部から生検し,組織学的所見より悪性黒色腫と診断した.腹会陰式直腸切断術およびセンチネルリンパ節生検術を施行し,術中迅速診断で転移陰性であったため郭清を省略した.術後はDAV-Feron療法を計5クール施行し外来経過観察中であるが,1年経過し無再発生存中である.