2011 年 72 巻 8 号 p. 2153-2157
症例は82歳,男性.右下腹部痛のため,近医で抗生剤投与にて経過観察されていたが改善なく,消化管穿孔の疑いで当院に紹介された.腹部造影CTにて,小腸穿通による限局性腹膜炎を疑い緊急開腹手術を施行した.術中所見では空腸間膜は肥厚し,発赤を伴った硬結となっていたため腸間膜膿瘍と考え,小腸部分切除術を施行した.病理所見では空腸憩室炎穿通による腸間膜膿瘍と診断された.小腸憩室は,十二指腸憩室とMeckel憩室を除けば比較的稀な疾患とされ,空腸に多く発症し,そのほとんどが仮性憩室と考えられている.しかし自験例を含めた小腸憩室穿孔・穿通41例の報告例の検討では,仮性憩室が36例と多いものの発症部位は空腸が10例,回腸が31例と回腸に多く発生し,中でも回腸末端部に特に多く発生することが分かった.