日本臨床外科学会雑誌
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症例
冠動脈バイパス術後横隔膜ヘルニアの1例
大原 利章竹原 清人中西 将元田中屋 宏爾青木 秀樹竹内 仁司
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2011 年 72 巻 9 号 p. 2257-2260

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抄録

症例は81歳,男性.2日前から続く発熱,心窩部痛を主訴に近医より紹介受診となった.既往歴として8カ月前にオフポンプ冠動脈バイパス手術(3枝)を受けていた.胸部レントゲン検査では心陰影に重なり,ニボー像が認められた.CT検査では胸骨右背側の横隔膜を穿破して心嚢内に腸管の脱出が認められた.横隔膜ヘルニアと考えられ,手術目的に入院となった.開腹すると肝前面に横行結腸を認め,大網と合わせて横隔膜内への陥入が認められた.横行結腸を用手的に引き戻し,大網は心嚢内で心臓と癒着していたため切離し,半吸収性メッシュにてヘルニア門を修復した.半吸収性メッシュは臓器癒着を予防し,収縮率が低いとされ,腹壁瘢痕ヘルニアでは有用性が報告されている.横隔膜ヘルニアの修復に半吸収性メッシュを用いた本邦報告例はない.冠動脈バイパス手術後の横隔膜ヘルニアは,胃大網動脈をグラフト血管として用いた場合は報告されているが,その他のグラフト血管での報告は極めて稀である.冠動脈バイパス手術後には,グラフトの種類に関わらず横隔膜ヘルニアが起こる可能性を念頭に置くことが肝要と考えられた.

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