日本臨床外科学会雑誌
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症例
副膵管造影が診断に有用であった膵・胆管合流異常のない膵液胆道逆流の1例
林谷 康生村上 義昭上村 健一郎首藤 毅末田 泰二郎
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2012 年 73 巻 1 号 p. 121-125

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抄録

症例は56歳,男性.心窩部痛を主訴に来院し,腹部造影CTで胆嚢内に15mm大の腫瘤を認め精査加療目的で入院となった.超音波内視鏡検査で胆嚢粘膜の肥厚と最大12mmの隆起性病変を3個認め,内視鏡的逆行性胆道膵管造影で膵・胆管合流異常はないが副膵管造影で主膵管に流入した造影剤の胆管内への逆流を認め,胆嚢内から採取した胆汁中のアミラーゼ値は111,400IU/L,細胞診はClassIIIであった.膵・胆管合流異常のない膵液胆道逆流を合併した胆嚢ポリープと診断して胆嚢摘出術を施行,病理組織学的所見は高度異型性を伴う過形成性ポリープであった.膵液胆道逆流は胆汁中のアミラーゼ測定やセクレチン負荷MRCPで診断されるが本症例では副膵管造影も有力な診断根拠となった.膵・胆管合流異常のない膵液胆道逆流は胆嚢癌の高危険群であり,予防的な胆嚢摘出術と術後の胆道癌発生を念頭に置いた経過観察が必要である.

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© 2012 日本臨床外科学会
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