2012 年 73 巻 1 号 p. 29-33
症例は41歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に当院紹介受診.超音波検査にて左C領域に2.5cm大の腫瘤を認め,針生検でglycogen-rich clear cell carcinoma(GRCCC)の診断を得た.手術は乳房円状部分切除術および腋窩リンパ節郭清を行った.残存乳腺に50Gyの放射線治療の後,LH-RH agonist+Tamoxifenによる術後内分泌療法を開始した.病理組織診断では,H.E.染色,PAS染色の所見は典型的なGRCCCの像を示していた.免疫組織染色ではS-100蛋白が陽性であった.GRCCCは全乳癌の約0.9~3.0%と稀な乳腺腫瘍であり,腫瘍細胞全体の90%以上が胞体内に多量のグリコーゲンを含んだ淡明な細胞からなる腫瘍と定義され,診断にはPAS染色が有用であるとされている.