2012 年 73 巻 10 号 p. 2702-2705
症例は糖尿病などの合併症を有さない77歳女性.平成11年8月,左鼠径ヘルニア嵌頓に対してメッシュプラグを用いた修復術を緊急で施行した.以後ヘルニア再発やメッシュ感染などなく経過するも,術後11年目の平成22年4月に左鼠径部痛を自覚し当科受診.左鼠径部に著明な発赤・腫脹を認め,腹部CTにて遅発性メッシュ感染と診断した.保存的加療も考慮したが,術後10年以上経過しており,プラグと腸管との瘻孔形成も疑われたため,onlay patchおよびplugを感染組織と共に摘出する手術を施行した.plugと腸管の瘻孔形成は認めず,外腹斜筋腱膜縫合にて腹壁を補強した.ドレーンを外腹斜筋腱膜下に留置し,局所陰圧閉鎖療法を行った.術後経過は良好で,感染・ヘルニア再発とも認めていない.術後10年以上経過した遅発性メッシュ感染は極めて稀であり,文献的考察を加えて報告する.