日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
多系統萎縮症を伴い術後呼吸管理に苦慮した直腸癌術後転移性肺腫瘍の1例
笠島 裕明岩崎 輝夫藤井 眞森本 芳和弓場 健義山崎 芳郎
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 73 巻 11 号 p. 2782-2786

詳細
抄録

症例は70歳,女性.65歳より多系統萎縮症(multiple system atrophy:以下MSA)と診断され通院加療中.2009年2月直腸癌に対してHartmann手術を施行し経過観察中,右肺S3転移性肺腫瘍に対して,2011年4月肺部分切除術を施行した.術直後に気管内チューブを抜管したが,術翌日シーソー様呼吸と気道分泌物貯留のため呼吸不全に陥り再挿管を要した.術後3日目に再抜管したが同様の呼吸状態となり再々挿管を要し,術後9日目気管切開施行,術後20日目人工呼吸器離脱,術後109日目退院となったが,術後120日目自宅にて呼吸停止し死亡した.MSAはオリーブ・橋・小脳系,黒質-線条体系および自律神経系という多系統の障害が進行していく孤発性神経変性疾患で,種々の機序で呼吸障害をきたす恐れがある.検索しえた限りMSA患者に対する開胸術の報告は認めず,周術期管理上の注意点を中心に報告する.

著者関連情報
© 2012 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top