2012 年 73 巻 12 号 p. 3135-3140
症例は82歳,男性.食欲不振と下痢を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査にて胃体上部大彎に深堀れ潰瘍を伴った粘膜下腫瘍様の2型腫瘍を認め,生検では高分化型腺癌であった.下部消化管内視鏡検査では横行結腸に瘻孔開口部を認め,生検では中分化型腺癌であった.胃横行結腸瘻は腹部CTおよび上部消化管造影にて確認された.内視鏡観察による肉眼形態と大腸からの生検組織で表層病変が確認できないことから胃外発育型胃癌による胃結腸瘻形成と考え,胃全摘術,左半結腸切除術,膵尾部,脾臓合併切除術を行った.リンパ節転移,多臓器転移,播種はなく根治手術が行われた.術後補助化学療法を行ったが8カ月後に再発死された.胃結腸瘻を伴う悪性腫瘍はしばしば原発同定に苦慮することがあるが,胃原発癌と結腸原発癌ではリンパ節郭清を含む術式,予後が異なるため術前診断が重要となる.原発診断には消化管内視鏡による肉眼所見が有用であると考えられた.