日本臨床外科学会雑誌
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症例
十二指腸まで虚血が及んだ広範囲非閉塞性腸管虚血症の1例
高田 英志松田 明久松本 智司上田 純志横井 公良内田 英二
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2012 年 73 巻 12 号 p. 3145-3149

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抄録
症例は79歳,男性.胸部大動脈瘤に対するステントグラフト挿入3日後から感染性腸炎による腹痛,下痢を認めていた.13日目に腹部膨満,嘔吐が出現し,著明な炎症反応およびCTにてイレウス,腸管気腫,門脈ガス血症を認めた.腹部所見が軽度で,発熱認めず,腸管気腫も限局していたため,イレウス管による腸管減圧を行った.しかし,その8時間後,突然ショック状態に陥った.腹部造影CTにて小腸壁の造影不良領域を認め,腸管壊死を疑い緊急開腹術を施行した.十二指腸から右側結腸にかけて広範な腸管虚血・壊死を呈しており,壊死腸管の切除を行った.その後ショック状態から離脱できず,術後11日目に多臓器不全のため永眠された.病理組織学的検査で腸間膜動静脈内に血栓や塞栓を認めず,非閉塞性腸管虚血症(NOMI)と診断した.十二指腸まで虚血が及んだ広範囲NOMI症例の報告は本症例を含め4例あり,腸管壊死を伴うと予後不良であることが予想される.
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© 2012 日本臨床外科学会
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