2012 年 73 巻 12 号 p. 3162-3166
80歳女性,主訴は腹痛,嘔吐.腸閉塞の診断で当院へ紹介.入院時臍下左側に圧痛を認め,CTでは小腸の拡張および小腸内に高吸収異物を認めpress through package(PTP)が疑われたが,フリーエアーは認めなかった.イレウス管を挿入し臨床症状の改善がみられた.しかし10日目に腹痛が再燃,再度CTを施行したところ,異物による消化管穿孔が疑われ緊急開腹手術を施行した.診断はPTPによる小腸穿孔で小腸部分切除,洗浄ドレナージ術を行い,術後25日目に退院となった.本症例は小腸屈曲部にPTPが停滞したために腸閉塞症状を呈し,保存的治療で一旦軽快するも,PTPが同部位に停留したため穿孔に至ったと考えられた.腹腔内の癒着が強固であったため腹膜炎は限局的であった.下部消化管に達したPTPについての治療法・緊急処置については未だ統一した見解はないが,若干の文献的考察を加えて報告する.