日本臨床外科学会雑誌
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平成23年度学会賞受賞記念講演
私の直腸癌手術回顧
小山 靖夫
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2012 年 73 巻 2 号 p. 277-284

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抄録

私の直腸癌手術は,恩師久留勝先生を措いてはありえない.先生のご指導は入門の1956年に始まるが,直腸癌手術に特化すれば,国立がんセンターに異動した1962年となる.当時の直腸癌根治手術後の5年生存率は,久留,梶谷(癌研)など国内トップクラスで50%台であった.久留院長の陣頭指揮のもとにスタートした国立がんセンターでは,先生は直腸固有筋膜に包まれた直腸を,きれいに骨盤壁から剥離する,流れるような手術を披露されていた.一方,外科スタッフは全国から集まった若手俊秀の集団で,各々出自の色合いを保ちつつ切磋琢磨していたので,久留流の直腸癌手術が直ちにがんセンター流とはならなかった.実際1968年頃の集計では,根治手術耐術者の5年生存率は48%であった.
これを初期とすれば,以後の私の直腸癌手術は,根治手術術式の確立・統一と肛門機能温存(前方切除,貫通術式,腹仙骨術式など)の適応拡大.拡大根治手術(拡大郭清,合併切除,骨盤内臓全摘術),排尿・性機能と肛門機能温存術の拡大(結腸肛門吻合,腹仙骨術式,自律神経温存術),低侵襲手術(鏡下手術)などの流れで回顧してみることが出来る.併せて,陣内伝之助,梶谷環両先生方始め多々ご指導を頂く場であった大腸癌研究会,その大腸癌全国登録事業などでの掛替えない経験もご報告しご批判を頂くこととした.

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