2012 年 73 巻 2 号 p. 314-318
症例は63歳,女性. 右腋窩のしこりを主訴に当院の皮膚科を受診した.腫瘤の一部を生検し,腺癌と診断された.潜在乳癌あるいは原発不明癌の腋窩リンパ節転移を疑い,原発巣検索目的に外科に紹介された.胸部CT検査およびFluoro deoxy glucose positron emission tomography(FDG-PET)検査で右腋窩に腫瘤を認めた.諸検査では,明らかな原発巣と考えられる病変を認めなかった.生検後の残存腫瘤切除と右腋窩リンパ節郭清術を施行した.切除腫瘤は免疫組織染色でgross cystic disease fluid protein-15(GCDFP-15)とandorogen reseptor(AR)が陽性であり,アポクリン癌と診断され,さらに腫瘍辺縁に乳管組織を認めたため,副乳内発生が疑われた.リンパ節転移はなかった.術後2年の現在,再発の兆候はない.