2012 年 73 巻 2 号 p. 395-399
虫垂粘液嚢腫は,破裂や粘液の漏出により腹膜偽粘液腫となる疾患である.過去16年間に当科で経験した9例(虫垂粘液嚢胞腺腫7例,虫垂粘液嚢胞腺癌1例,過形成1例)について検討を行った.年齢は35~65歳で,男性3例,女性6例であった.主訴は右下腹部痛が2人,腹満感が1人,その他6人は無症状で検診から発見された.9例中6例に術前診断が可能であり,1例は腹膜偽粘液腫の術前診断が可能であった.術式は虫垂切除が1例,盲腸部分切除が4例,回盲部切除が4例であり,5例に腹腔鏡手術を安全に行えた.9例全例が生存中で,腹膜偽粘液腫を伴った虫垂粘液嚢胞腺癌の1例が,13カ月後に再発し再手術を施行しているが,その他の症例で再発は認めていない.自験例を含む本邦報告411例の臨床病理学的検討を加え,治療戦略を考察した.