日本臨床外科学会雑誌
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症例
静脈血栓塞栓症を併発した腸間膜デスモイド腫瘍(4,840g)の1例
山口 哲司齊藤 文良小島 淳夫山下 巌桐山 誠一塚田 一博
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2012 年 73 巻 3 号 p. 693-698

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抄録

症例は39歳,男性.半年前から腹囲の増大を自覚していた.数日前より続く右下腹部痛を主訴に当院外来を受診した.腹部手術や外傷の既往はなく,家族性大腸腺腫症の既往歴や家族歴もなかった.精査において右下腹部を中心とする約25cm大の腫瘤を認め,同時に両側肺血栓塞栓症を伴う,下肢深部静脈血栓症が指摘された.呼吸,循環動態は安定しており,腹部症状は比較的軽度であったため手術に先行して抗凝固療法を開始した.腹腔内腫瘤は回盲部由来の間葉系腫瘍が疑われた.深部静脈血栓症は残存するものの,肺血栓塞栓症が縮小したことを確認し,回盲部切除で腫瘍を摘出した.摘出腫瘍は長径27cm,重量4,840gのデスモイド腫瘍であった.術後は合併症なく経過し退院した.今回,われわれは診断時に無症候性の静脈血栓塞栓症を伴った巨大腹腔内デスモイド腫瘍の1例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2012 日本臨床外科学会
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