日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
化学療法で原発巣と両側腋窩リンパ節転移巣のpCRが得られた局所進行乳癌の1例
田中 由美尾浦 正二太田 文典内藤 古真池田 雅子岡村 吉隆
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 73 巻 4 号 p. 801-806

詳細
抄録

症例は53歳,女性.右乳房の潰瘍性病変を主訴に当院を受診.精査の結果,右鎖骨上リンパ節および両側腋窩リンパ節転移を伴うトリプルネガティブ乳癌(硬癌)と判明した.初期化学療法としてFEC100療法を4サイクル,続いてドセタキセル(75mg/m2)を4サイクル施行.原発巣は完全に消失し両側腋窩リンパ節も著名な縮小効果を認め,臨床的完全奏効と判断し,右非定型的乳房切除術と対側腋窩リンパ節郭清を施行.病理学的にも原発巣と郭清を行った全てのリンパ節に生存可能な癌細胞を認めなかった.術後は,右胸壁および鎖骨上リンパ節に対し放射線照射を施行し,術後1年8カ月経過した現在も再発を認めず良好に経過している.全身療法奏効例に対する局所療法は,遠隔転移を伴う乳癌に対する有用な治療戦略になり得る可能性を秘めている.

著者関連情報
© 2012 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top