日本臨床外科学会雑誌
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症例
甲状腺のcarcinoma showing thymus-like differentiationの1例
大石 一行澁谷 祐一河北 直也尾崎 和秀岡林 孝弘
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キーワード: CASTLE, 胸腺腫瘍, 胸腺癌
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2012 年 73 巻 5 号 p. 1064-1069

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抄録

症例は70歳,女性.嗄声を主訴に受診した.胸骨切痕上に硬い可動性不良な腫瘍を認め,超音波で甲状腺左葉下極に内部が不均一で低エコーを示す31mm大の腫瘍と,右総頸動脈背側に24mm大の境界明瞭なリンパ節を認めた.CTでは甲状腺左葉下極から上縦隔に及ぶ不整な腫瘍と両側肺野に散在する小結節影を認めた.FNAB(fine needle aspiration biopsy)では細胞成分は認められなかったが,甲状腺悪性腫瘍とそのリンパ節転移と診断し,甲状腺亜全摘術,リンパ節郭清を施行した.腫瘍は周囲臓器への浸潤を認めたため,左腕頭静脈合併切除,左反回神経合併切除を行った.病理組織検査では異型細胞が島状構造をとりつつ増殖し,背景にはリンパ球を伴っていた.また,免疫染色でCD5陽性,TTF-1陰性,thyroglobulin陰性であり,CASTLE(carcinoma showing thymic-like differentiation)と術後診断した.術後は放射線療法を行い,術後3年半となる現在,局所再発は認めていない.CASTLEは非常にまれな腫瘍であるが,甲状腺下極から縦隔に及ぶ腫瘤を認めた場合には念頭におく必要があると思われた.

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© 2012 日本臨床外科学会
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