日本臨床外科学会雑誌
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症例
爪楊枝誤飲による小腸穿通の1例
玉手 雅人大野 耕一長谷 龍之介鈴木 善法藤森 勝関下 芳明
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2012 年 73 巻 5 号 p. 1115-1119

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抄録

異物誤飲は,日常診療においてよく見受けられる.しかし,異物が消化管穿孔の原因となることはまれであり,誤飲の自覚のない時は診断に苦慮することが多い.今回われわれは爪楊枝を誤飲し,小腸穿通・腹膜炎を発症した1例を経験した.症例は59歳男性で統合失調症に罹患し,内服加療中であった.約7日間続く下腹部痛を主訴に当院を受診した.CT検査で小腸間膜内に腫瘤を認め,内腔に空気が見られたため,消化管穿孔疑いで手術となった.患者は小児期に急性虫垂炎による汎発性腹膜炎で,複数回の手術歴があった.手術は腹腔鏡による観察を行った後,開腹し小腸の癒着を剥離した.空腸回腸移行部に腸間膜膿瘍を認め,その中に腸管を穿孔する爪楊枝を認めた.剥離後に膿瘍周囲の腸管を切除した.異物誤飲による消化管穿孔の頻度や術前における診断の困難について若干の文献的考察を加えて報告する.

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© 2012 日本臨床外科学会
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