2012 年 73 巻 5 号 p. 1238-1242
症例は60歳,男性.会社の健康診断で肝機能異常を指摘され当院を受診した.腹部CTと超音波検査にて肝腫瘍と膵頭部腫瘍を指摘された.上部消化管内視鏡にて十二指腸に腫瘍の侵潤を認め生検にて膵癌と診断された.肝転移のある膵癌stage IVbであるためgemcitabine/S-1の化学療法を4クール施行した.終了後,腹部造影CTで肝腫瘍と膵腫瘍の30%以上の縮小を認め,上部消化管内視鏡で十二指腸の浸潤が認められなくなった.新しい転移巣も認めないため膵頭十二指腸切除および肝転移巣切除を施行した.以後S-1内服などにより経過を見ているが術後50カ月以上した現在無再発である.膵癌肝転移に対して手術を施行し長期生存した症例は稀と考えられるので,若干の文献的考察を加えて報告する.