2012 年 73 巻 5 号 p. 1252-1256
患者は66歳,男性.糖尿病の治療中,5カ月前より臍上部に腫瘤を触知していたが,無症状であったため様子をみていた.しかし,徐々に腫瘤が大きくなり痛みを伴うようになったため,近医受診,当科紹介となった.検査所見では,CRP 1.26mg/dlと炎症反応の軽度上昇を認め,腹部CT,MRIにて横行結腸腹側に長径5cm大の腫瘤性病変を認めた.大網梗塞,転移,感染などによる炎症を疑い待機的手術を施行した.病理組織学的診断では錯綜する膠原線維を背景として紡錘形細胞の増殖や,高度の炎症細胞浸潤がみられ,膿瘍化した壊死組織も認められたことから原発性大網膿瘍と診断した.大網膿瘍はまれな疾患であり,なかでも原発性の大網膿瘍は現在までの報告が本邦では数例しかなされていない.今回われわれは原発性大網膿瘍の1切除例を経験し,良好な経過を得られたため文献的考察を加え報告する.