日本臨床外科学会雑誌
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症例
一側が組織型の異なる多発癌であった同時性両側乳癌の1例
平尾 具子細井 孝純中尾 武杉原 誠一堤 雅弘今川 敦史
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キーワード: 両側乳癌, 多発乳癌
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2012 年 73 巻 6 号 p. 1376-1380

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抄録

症例は56歳,女性.他院で乳腺症経過観察中に左乳癌と診断され加療目的に当院紹介となった.当院受診時には両側乳房に腫瘤を触知し,針生検にて両側硬癌と診断した.乳房造影CT検査では左乳房腫瘍の乳頭側よりに髭状濃染域を認め,乳管内進展像と考えられた.両側の乳房温存術とセンチネルリンパ節生検を行った結果,右乳房には硬癌[T1c N0(0/3) M0],左乳房には硬癌[T1c N0(0/4) M0]と浸潤性小葉癌[T2 N0(0/4) M0]を認め同時性両側乳癌・左多発乳癌であった.術前に左乳癌の乳管内進展と考えた造影CTでの濃染域には浸潤性小葉癌(4cm)と硬癌の乳管内進展が混在していた.
同時性両側乳癌の発生率は1%前後と報告されているが,乳管癌と小葉癌の同時性多発乳癌は比較的稀であると考える.片側乳癌診断時には両側・多発等の可能性を念頭に置き両側乳房精査を詳細かつ慎重にすすめる必要性を認識した.

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© 2012 日本臨床外科学会
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