2012 年 73 巻 6 号 p. 1445-1449
全身性エリテマトーデス(SLE)の血管炎に起因する直腸穿孔の1例を経験した.患者は41歳男性.11歳時にSLEを発症し,ステロイド剤の内服を行っていた.今回,大腿骨頭骨置換手術後15日目に下腹部痛,発熱が出現し,CT検査で遊離ガスを認め,消化管穿孔と診断された.開腹すると,膿性腹水を認め,明らかな穿孔部位は指摘できなかったが,炎症所見の程度から上部直腸の穿孔と判断し,低位前方切除術,腸瘻造設術を施行した.切除標本では一部に潰瘍形成と腸管壊死を認めた.組織学的には血栓形成を伴う血管炎を認め,これにより腸管穿孔したと判断された.SLE治療中の消化管穿孔はステロイド内服等により症状が顕著化しないことも多く,救命のためには画像を含めた総合的かつ迅速な診断と適切な治療が必要である.