日本臨床外科学会雑誌
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症例
大網炎をきたし腹腔鏡で虫体が観察された腹腔内アニサキス症の1例
伊藤 眞史吉田 基巳
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2012 年 73 巻 6 号 p. 1556-1560

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抄録

今回われわれは,大網炎をきたし腹腔鏡で虫体が観察された腹腔内アニサキス症の1例を経験したので報告する.症例は31歳,女性.右下腹部痛を主訴に当院を受診.腹部造影CT検査では,盲腸腹側に炎症による脂肪織の混濁を,その下方に虫垂と思われる管状構造物を認め,急性虫垂炎の診断にて腹腔鏡での手術を施行した.腹腔内は右側結腸と大網の癒着を認め,特に盲腸前面の大網は硬化,肥厚し発赤を認めた.その表面に長さ約1cmの細い糸状の虫体を疑う構造物を認めた.虫垂はほぼ正常であった.腹腔鏡下虫垂切除術および炎症の強い大網の部分切除を施行した.病理組織検査では,虫垂は慢性虫垂炎,炎症の強い大網にはアニサキス虫体を認めた.今回の症例では,虫体による腸管穿孔部は穿孔性腹膜炎を引き起こすことなく閉鎖し,消化管より腹腔内に侵入したアニサキス虫体が大網に到達し大網炎を引き起こしたものと思われる.

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