2012 年 73 巻 6 号 p. 1561-1565
症例は30年前に虫垂切除術の既往のある42歳の男性.粘液尿を認め,近医泌尿器科を受診した.精査にて骨盤内に巨大嚢胞性病変と多量の腹水を認め,前医にて骨盤内腫瘍の部分摘出術が施行された.術後の病理検査で,腹膜偽粘液腫(以下PMPと略記)と診断され当院へ紹介された.MRIで臍下部に嚢胞性腫瘤が存在し,腫瘍と膀胱との間に瘻孔形成を認めたため,尿膜管由来のPMPと診断し,開腹手術を施行した.臍下の腫瘍は膀胱壁まで連続していた.広範囲腹膜切除,膀胱部分切除,胆摘,脾摘,結腸右半切除,大網切除による肉眼的な腫瘍の完全切除と術中温熱化学療法を施行した.PMPの原発巣はほとんどが虫垂で,自験例のごとく尿膜管由来は稀であるため,若干の文献的考察を加えて報告した.