2012 年 73 巻 7 号 p. 1634-1637
78歳,女性.平成18年4月より左乳房腫瘤を触知し,6月に近医を受診した.左B領域に胸壁固定を伴う4.9×4.5cm大の腫瘤を認め,CT・MRI・US・MMGにて乳癌が疑われたが,2度の穿刺吸引細胞診で悪性細胞を認めなかったため,精査加療目的に当科紹介となった.左B領域に弾性硬,可動性不良な5cm大の腫瘤を触知し,腋窩リンパ節腫大は認めなかった.USにて左B領域に内部不均一で境界明瞭な不整形腫瘤を認めるものの,胸壁浸潤は認めず,悪性所見に乏しく,炎症性変化の可能性が示唆された.穿刺吸引液の結核菌検査にて,塗沫染色でガフキー6号の結果であり,培養も陽性のため,乳腺結核と診断した.同時に施行した喀痰結核菌培養は陰性で,胸部CTにて肺結核を疑う所見は認めなかった.肺結核に準じた治療を施行し,外来通院にて経過観察中である.肺結核を伴わない乳腺結核は極めてまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する.