日本臨床外科学会雑誌
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症例
十二指腸球部接吻潰瘍が同時穿孔した1例
今川 敦夫小川 雅生市川 剛出村 公一川崎 誠康亀山 雅男
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2012 年 73 巻 7 号 p. 1695-1699

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抄録

症例は66歳,女性.3日前からの心窩部痛を主訴に当院を受診した.腹部は板状硬で,腹部全体に反跳痛を認めた.血液生化学検査ではWBC 12,400/μL,CRP 0.40mg/dlと炎症反応の上昇を認め,腹部CT検査で腹腔内遊離ガスと腹水を認めた.上部消化管穿孔による汎発性腹膜炎を疑い,同日緊急手術を施行した.手術所見にて十二指腸球部前壁と後壁にそれぞれ約2cm大の穿孔を認め,十二指腸球部接吻潰瘍の同時穿孔と診断した.各々の穿孔部への大網充填を試みたが,後壁穿孔部に大網を固定することが困難であったため,前壁の穿孔部に充填した大網をはずし,大網を後壁穿孔部位から十二指腸内に充填し,さらにこの大網を前壁穿孔部より十二指腸外へ引き出した上で前壁と縫着した.充填した大網により通過障害をきたすことが危惧されたため,胃空腸吻合とBraun吻合を追加施行した.術後経過は良好で,第21病日に軽快退院した.

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© 2012 日本臨床外科学会
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