2012 年 73 巻 8 号 p. 1908-1913
症例は86歳,男性.非結核性抗酸菌症の治療歴があり,右緊張性気胸を発症して前医に緊急入院となった.胸腔ドレナージを施行されるも気漏が遷延するため,発症5日目に当院に転院となった.全身状態が不良であるため早期の手術は回避し,胸膜癒着術を4回施行したが気漏は停止しなかった.喀痰,胸水の培養検査いずれからもMycobacterium intracellulareが検出され,胸部CT検査では右中葉の非結核性抗酸菌症の病巣が胸膜を穿破していると推測された.そこで,肺瘻部は右中葉と予測し,入院30日目に全身麻酔下の手術を実施した.予測病巣近傍の小開胸創から胸腔鏡補助下に肺瘻を同定し,フィブリン糊とポリグリコール酸フェルトを用いて閉鎖した.非結核性抗酸菌症に続発した気胸は難治性とされるが,肺瘻部がある程度特定される場合には,耐術可能な範囲での手術療法が時期を逸せず考慮されるべきと考えられた.